夏の小倉名物
「夏の小倉名物」で検索すると、「小倉焼きうどん」とか「北九州のフク」などというグルメが表示される。「小倉焼きうどん」は、戦後まもない小倉の食堂街で生まれたという。当時手に入らなかったそば玉の代わりに干しうどんを使い、豚バラ肉と若松産のキャベツを使った、小倉を代表するソウルフードだという。
「北九州のフク」の「フク」とは「ふぐ」のことで、幸福にかけてフクと呼んでいるらしいが、関門海峡で育った最高のトラフグを使った、コリコリとした独特の食感であるフク刺し、濃厚なフク白子は、まさに幸福を呼ぶ名物グルメの名にふさわしい。
しかし、競馬ファンにとって「夏の小倉名物」と言えば、「テイエムとカシノ」の対決に決まっている。この対決はテイエム&カシノ祭りとかテイエム&カシノの大運動会などと言われ、異様な盛り上がりを見せる。これが単に二人の馬主による所有馬の多頭出しであれば、ここまで盛り上がりはしない。
これらの馬が冠名を持ち、出走表が「テイエム〇〇」「カシノ〇〇」で埋まるからこその盛り上がりであり、出走表が「映える」のだ。
テイエム、カシノ限定?
例えば、2013年の「ひまわり賞」。九州産馬限定の2歳オープン特別レースで、18頭立てだった。その18頭のうちテイエムが7頭(テイエムキュウコー、テイエムチュラッコ、テイエムトッピモン、テイエムゲッタドン、テイエムボッケモン、テイエムヒットバセ、テイエムヒッカッタ)、カシノが5頭(カシノタロン、カシノサプライズ、カシノバル、カシノピカロ、カシノエーデル)という、出走数の3分の2がテイエム、カシノで占められている、まるで「テイエム、カシノ限定」レースのようだ。
なお、レースは1着が1番人気のテイエムキュウコー、2着が2番人気のテイエムチュラッコで決まり、配当も入線した馬名も平穏な結果に終わった。ちなみに3位はキリシマホーマで、馬券圏内をテイエム&カシノで独占とはいかなかった。ただ、「キリシマ」もキリシマホーマとキリシマムスメの2頭出しだった。
テイエム
「テイエム」の馬主、竹園 正継(たけぞの まさつぐ)氏は、鹿児島出身の実業家・発明家で、耐震補強材を開発・製造するテイエム技研株式会社の創業者であり、豊田行二の小説「大いなる野望」のモデルにもなっているというから、ひとかどの人物なのであろう。なお、「テイエム」の由来は、自身の名前「Takezono Masatsugu」のイニシャル「TM」からきている。
馬主としては、G1を7勝した最強馬テイエムオペラオー、G1を3勝したテイエムオーシャンを所有するなど大成功しているが、併せて、オーナーブリーダーとして「テイエム牧場」を創設し、九州から大レースを勝つ馬を出すことを夢見ているという。
そして、テイエムチュラサンにより2005年にアイビスサマーダッシュを制覇し、九州産馬として1998年のコウエイロマン以来となる重賞勝ちをするなどの成功を収めることになるから凄い。
カシノ
「カシノ」の柏木務(かしわぎつとむ)氏は、獲得賞金2億3千万のカシノエタニティなどの馬主である。所有馬に中央での重賞勝ちは無く、大きな活躍をした馬はいないが、夏の小倉を賑わせてくれる名物馬主といっていい。
柏木氏は、九州軽種馬協会の会長でもあり、生産馬や購入馬は自宅敷地内の1周600メートルのダートコースのトレーニングセンターを使って育成し、トレセンへ送り出しているという。南九州を代表する馬主であり、夏の小倉開催にはなくてはならない存在である。
2020年から2021年にかけては、熊本県産馬初の重賞制覇とG1への初出走を果たした「ヨカヨカ」などの活躍もあり九州産馬界隈も熱い。その先頭に立つ「テイエム」と「カシノ」のお祭りレースから、全国区になるほどのヒーローが出現してほしいものだ。


