敢えて勝たない戦法
私が競馬を始めた平成元年頃は、データ競馬は限られた人が趣味的に行う予想方法で、競馬ファンというよりはパソコン通がパソコンを使って競馬予想をするとか、一部熱狂的なファンがいた(と思われる)パソコンを使ったデータ予想紙「トータライザー」(2013年に紙版が廃刊)が、やっているという程度のものであった。
スマホもタブレットも無い頃だから、競馬場や馬券売り場にいるファンは全員が、赤ペン片手に競馬新聞かスポーツ新聞を持っていて、情報源と言えばそれしか無かった。
よって、馬券を買う際の決め手となるのは予想紙のトラックマンの印であったり、厩舎情報であったり、そしてファンたちに伝わる競馬格言といったようなアナログで、かつオカルトに近い要素が多くを占めていた。
そんな格言じみたもののなかで、真面目で誠実で法令遵守が叫ばれる昨今となっては、ちょっと声にしづらくなったものとして「勝とうと思えば勝てるが、勝つとクラスが上がって稼げないので、ここは2着(3着)に抑えるはず。」というのがあった。
こう見えても高校野球や「正々堂々」といった言葉が好きな私は、(競馬は勝負の世界、そんなことある訳ないだろう。)と思っていたが、「シンドバット」という馬に出会い、(こいつはそうかも。)と思うようになった。
900万下の王、シンドバット
この「シンドバット」は、1992年の9月から翌年1993年の11月までの15ヵ月間、900万下(今の1,000万下)条件で走り続け、1番人気で2,3着を繰り返し、かなりの金額を稼いでいる。例えば、この間に特別レースで2着に3回、平場でも2着に3回なっている。
この2着6回の賞金だけでも550万×3回(特別)=1,650万と400万×3回(平場)=1,200万の合計2,850万を稼いでおり、仮に勝っていた場合は1,370万(特別の場合)プラス、昇級後の賞金となるが、昇級して上位にこないとそこからの上乗せは少ないから、やはり900万クラスで2,3着を繰り返したほうが割が良さそうだ。
なお、「シンドバット」の馬主は「シンホリスキー」や「シンウインド」といった「シン」の冠名で知られる林幸雄氏であり、この馬も一応「シン」の変化球冠名といった位置づけのようだ。
シンドバット、通算成績は50戦6勝[6-11-3-30]、獲得賞金は1億2,046万円で、準オープン(1,500万下)で勝利しているが、それは最後の引退レースだったから、一度もオープンクラスのレースには出走していない。それでも1億稼ぐのだから、たいしたものだ。
どっちが強い?
このブログで先日取り上げた第51回桜花賞の2着馬、ヤマノカサブランカは、シンドバットとは違いバリバリのオープン馬。それも重賞で2着(合計4回。しかもうち2回はG1)を繰り返しており、同じように2,3着が多いといっても格が違う感じだが、通算成績は20戦2勝[2-4-2-12]、獲得賞金は1億2,402万円というから、獲得賞金はシンドバットと大差ない。
2頭が一緒に走ったら、どっちが勝つだろうか。考えるまでもなく、実はこの2頭、一度だけ同じレースに出走している。それは1991年2月、500万下の京都ダート1200の平場。
このレース、結果はヤマノカサブランカが勝利し、シンドバットは2着だった。格どおりの結果だが、シンドバットがこの時から2着を狙っていたとしたら、むしろシンドバットのほうが格上感がでてくるが、どうだろうか。

