ノミ屋とは
「ノミ屋」は言うまでもなく違法(競馬なら競馬法違反、競艇ならモーターボート競争法違反)であり、これを利用することで国の収入となるべき売上金の一部が減ることや、暴力団の資金源となることから許される行為ではない。
しかし、ネットやスマホで馬券(舟券、車券)が買える今とは違い電話投票の権利もなかなか当たらなかった昔、電話一本で買える「ノミ屋」は、その手軽さと独自のサービスにより、かなりのニーズがあったようだ。特に、近くに競馬場や場外馬券売り場が無い地域では重宝されたのではないか。
1981年には、ザ・ドリフターズの志村けんと仲本工事がノミ行為により書類送検され、志村けんは金額が少ないことから起訴猶予となったが、仲本工事は罰金刑に処せられている。やはり、昔はこうやって普通によく利用されていたのであろう。
ノミ行為とノミ屋
例えば、貴方が友達から馬券の購入を頼まれたとする。「どうせ当たらんだろう」と、それを買わずに自分のお金とする。このような「人から頼まれた馬券を買わない」行為を、「馬券を飲む」と表現するところから「ノミ行為」という。
もちろん、当たってしまった場合は、自腹で的中した分の配当を払う必要がある。 これを業として組織的・経常的に行うのが「ノミ屋」である。また、友達の間で頼んだり頼まれたりする場合とは違い営業でやっているため、ノミ屋は馬券を代わりに買うだけではなく賭け金から一定の取り分を取る。
元々、中央競馬を含めた公営ギャンブルは、「集めた賭け金から一定の金額を控除し、残った金額を当たった票数に応じて払い戻す」パリミュチュエル方式という方式を取っている。その控除率は、最も低い単勝・複勝で20%、最も高いWin5で30%となっている。 その控除した20%や30%のお金のうち10%が国庫に納付され、残りの金額が賞金や競馬場の運営費に充てられている。
一方、ノミ屋は運営費といっても事務所と多少の人件費しか要らないため、控除額は少なくても十分運営できる。そこで、ノミ屋ではサービスとして控除率を10%程度下げ、配当金を1割上乗せする又は購入金額を1割減らすところが多い。その他に、ハズレ馬券の10%を還元したりツケで買えるなどのサービスをしている。一方で、最近は超高額配当が簡単に出るようになったため、券種を制限したり配当の上限を決めていることもある。
ノミ屋殺し
そんなノミ屋に対して行う「ノミ屋殺し」というのがある。簡単に言えば、オッズを操作してノミ屋を破産に追い込むというものである。誰が何のために行うのかは知らないが、同業者が相手を破滅させるためだとか、警察の奥の手であるとか、選挙資金を稼ぐために政治家がやっているなんて事も言われているが、どれも信憑性は低く都市伝説の域を出ない。
しかし、そうとしか思えないような異常投票というのが実際あるから面白い。 その「ノミ屋殺し」の方法は、間違いなく勝つであろう本命馬のオッズを上げて、その馬の馬券をノミ屋で買う。これだけである。
例えば単勝110円の馬のオッズを300円まで上げる。そしてその単勝をノミ屋で大量に買うのだ。 「どうせ300円になっているなら、本当の主催者の方で買えばいいじゃないか」と思うだろうが、それを主催者のほうで買ってしまうと単勝オッズは一気に下がってしまう。主催者とノミ屋あってこその必殺技なのだ。
しかし、110円のオッズをどうやって300円にするのか。それが問題である。もちろん、その大本命の馬以外の馬の単勝を大量に買うのであるが、それじゃあその資金で結局マイナスになってしまう。
対象となる馬券
そこで利用するのが、「売れてない馬券」である。地方競馬で単勝10倍の馬に1万円賭けたらオッズが1.5倍になった、というような話を聞いた事はないだろうか。そんな「売れてない馬券」を使うと、小さな資金で大きくオッズを変動させることができる。
それは、例えば地方競馬の複勝であり、競艇の単複であり、競輪なら枠複(単複があった昔なら単複だが)といったところであろう。なお、売り上げの多い中央競馬では、おそらく無理だろうと思われる。
実際には、競艇ではこんなレースがあった。2002年の児島競艇場。2号艇、崎野俊樹の複勝に599万円が投票された。結果3着(競艇の複勝は2着まで)となり、1着4号艇の複勝が249,810円、2着3号艇の複勝が172,970円ついた。 もし、ノミ屋で4号艇の複勝を1万円買っていれば、その配当は2,400万を超えるから主催者側に投票した599万円を差し引いても大幅なプラスである。
現実には、このケースはあまりに極端過ぎて「ノミ屋殺し」という感じはしないが、実際のところ誰が何のためにやったのかはよく分からない。「賭けた者のみぞ知る」といったところであろう。 この頃はオウム真理教の事件などもあり、宗教がらみなどとも噂されたようだが、そんな夢のない話よりは「ノミ屋殺し」ではないかと想像するほうが、なんだかワクワクする。
異常投票
他にも異常投票と言えるケースはあるようだが、実のところ、最近はキャッシュバックキャンペーンや、ポイント稼ぎのための大量投票というのが本当のところのようでつまらない。 博打の世界の「いかがわしさ」や博打の持つ熱量、そして物語。そんなものを感じる「ノミ屋殺し」のような話は、現実にはあろうがなかろうが、その魅力は博打そのものと変わらないほどだ。
ただ現実はというと、異常投票を見つけ「これはとっておき情報があったのだろう」と邪推し、自分の予想はおいといてしこたま馬券を買い、そしてお決まりのようにハズレる。現実は厳しい。

